世の中の働くお母さんは妊娠・出産で仕事を一時的に離れなければなりません。我が子の出産と育児に関わる休業制度の「産休」と「育休」は、休業で一時的に収入減となる場合の強い味方になる制度です。
また、産休と育休中は無給になる等といった話を聞き、不安に思ったことがある人もいるかもしれません。
1.休業中の給料は?
産休・育休中は働いていない期間のため、基本的にはどの企業でも無給であるケースがほとんどです。もちろん、企業によっては独自の補助を支給している会社もありますが、ほんの一握りでしょう。
産休・育休の取得は労働者の権利ではありますが、給料自体は労働の対価として支払われるものであるため、休業中でも給料を支払う義務が企業にはありません。
育休中は無給なんて言われたら、誰も育休を取得しないのではないかと思うかもしれませんが、無給になるからといって収入がなくなるというわけではありません。実際には、会社が加入している社会保険と雇用保険から、給料の100%までとはいかないですが5~6割程度の給付金が支給されます。おおまかですが以下の表にて説明します。
保険 | 名称 | 支給期間 | 支給額 | |
産休 | 社会保険 | 出産手当金 | 出産日以前42日と 出産後56日目までの間 | 1日あたり※ 12月平均基準報酬月額÷30×2/3 ※健康保険法により定められた計算方法による |
育休 | 雇用保険 | 育児休業給付金 | 産休後の子が1歳(最大2歳) になるまでの間 | 1日あたり※ 給与の50~67% ※雇用保険法により定められた計算方法による |
これらの給付金はすべて所得ではないため、税金の取り扱いについては非課税になります。
さらに、健康保険料・厚生年金保険料などの社会保険料が産休・育休中は免除されます。免除された期間、年金については納付済み期間とされるため、年金受給額に影響はありません。
2.育児休業給付金の受給期間延長に関する審査の厳格化について
育休中の育児休業給付は、前途したように育児休業中の所得保障として広く利用されています。
原則として子が1歳になるまでの間ですが、1歳以降「やむを得ない事情」がある場合には1歳6か月または2歳に達するまで延長することができます。この「やむを得ない事情」とは、親が仕事への復帰を目指しているのもかかわらず、保育所への入所について抽選で落選した、等があたります。
延長申請のタイミングと要件
育児休業給付の延長申請ができるタイミングは以下の2回あります。
①子が1歳に達する時 ②子が1歳6か月に達するとき
それぞれのタイミングで引き続き休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合、育児休業給付は延長されます。
具体的には「子の1歳の誕生日から保育園等に入所させるべく市区町村等自治体に利用申し込みをしていたが、定員に達していたため保留扱いとなった」という状態を示す保留通知書を提出しなければなりません。
しかし中には、あえて落選することを狙い人気の高い保育所に申請し、より長く給付を受けようとするケースが発生しています。こういった場合になってしまうと、育児休業給付金の本来の目的に沿わないこと、行政事務への負担をかけていることなどが問題視され、2025年4月1日から育児休業給付の延長手続きがより厳格化される予定となりました。
改正の概要
改正において、次の要件が加わる予定です。
保育の利用を希望し、申込みを行っているが、当該子が一歳に達する日後の期間について当面その実施が行われない場合について、速やかな職場復帰を図るために保育所等における保育の利用を希望しているものであると公共職業安定所長が認める場合に限る
下線の部分については、次の要件等が盛り込まれる予定です。
- 利用を申し込んだ保育所等が、合理的な理由なく、自宅または勤務先からの移動に相当の時間を要する施設のみとなっていないこと
- 市区町村に対する保育利用の申込みにあたり、入所保留となることを希望する旨の意思表示を行っていないこと
まとめ-故意に落ちた判定はできるのか
実際、保育園選びには慎重になるご家庭も多く、園との相性はもちろん、各園の難易度、立地、自宅からの距離、園の方針や質など様々な要素があり、一概に「落選狙い」であるか否かをハローワーク側がすべて判定できるのかという疑問が残ります。
現段階では、2025年度から給付の延長を申し込む際に、詳細な保育所の申し込み内容などを記した申請書を求められる方向です。
過去、一部の自治体では育児休業延長希望者に形式的な手続きで保留通知を発行していたこともあるようですが、来年からは厳格な審査があることを見越して保育園探しを進めなければならないことが予想されます。