退職後、仕事に復帰ができない...
労働者が退職する場合は大きく「自己都合退職」と「会社都合退職」に分かれますが、うつ病などの精神疾患により復帰できない場合や無断欠勤の場合など、退職理由を判定しにくいケースもあります。
以下、これらの場合に用いられる「自然退職」について、自己都合退職等と比較しながら解説します。
典型的な自然退職ルール
ある事由が生じた場合に自然退職とするためには、その事由を就業規則等に規定し、労働者に周知しなければなりません。
例えば定年年齢は事業所ごとに異なるため、就業規則等で周知されていない限り「一般常識として60歳で定年である」などと主張することはできないと考えましょう。
休職期間満了による自然退職
病気により休職した従業員が、休職期間満了後も病気が完治せず復職できないことを理由に自然退職としたい場合、就業規則等に「休業期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難の場合は、休業期間の満了をもって退職とする」旨の規定を設けることが必要です。
また休職に関して右記の表の事項を定める必要があります。
<休職に関して就業規則に定めるべき事項>
●休職命令の対象:私傷病・留学・出向など
●事由ごとの休職期間と延長の範囲:3ヶ月程度〜
●休職期間中の報告:病状報告などの頻度等
●復帰後の判断方法:診断書、試し出勤の有無等
●復帰の方法:配置転換の可能性等
無断欠勤による自然退職
無断欠勤・音信不通など連絡がとれない状態が一定期間続いたことにより自然退職とする場合、就業規則等に「〇〇日間無断欠勤を続けた場合は、その最終の日をもって自然退職したものとする」などという規定を設ける必要があります。無断欠勤の期間は2週間から1か月程度が適当でしょう。
なお、無断欠勤による自然退職の場合は、複数の方法で連絡を試み「会社がコンタクトを取ろうとしたが音信不通だった」という記録を残しておくとよいでしょう。
自然退職は自己都合か
自然退職は本人からの直接的な退職の意思表示はないものの、「本人の病気という都合により働けなくなった」「本人が労働契約上守るべき出社義務を果たさず、働く意思を示さなかった」ということで自己都合退職と扱うことが通常です。
退職の理由はいわゆる失業保険などの給付の金額等に影響するほか、助成金の受給要件にも関わるため、自然退職にかかる規定整備は重要と言えます。
自然退職の場合、労働者が考えるべきこと
体調不良で仕事に復帰できない・連絡をとりづらくなる場合があった場合でも、雇用者の場合は「社会保険の脱退手続き」や「源泉徴収票の送付」など手続きが必要となります。
また、自然退職が自己都合の場合と会社都合の場合では、失業保険の金額や給付期間も変わってくるので、就業規則などを見直し、自然退職についての記載がないか確認しましょう。