行政書士と学ぶ故人の銀行口座はどうなる?~口座凍結から解約までのタイミング

昔々のお話しです。どなたかがお亡くなりになると町内会の掲示板に張り出され、電柱にはお通夜の案内が貼られました。それを自転車に乗った銀行員が見つけると口座を凍結してしまうという噂が...。
実際はどうであったかは不明ですが、新聞の訃報欄や取引先の情報などから知らないうちに口座凍結される事例はあったようです。
現代は個人情報の取扱いが厳重になりました。役所に死亡届を出しても銀行は凍結しません。基本的にお亡くなりになった旨を銀行に連絡して初めて凍結手続きという流れになります。しかも複数の口座をお持ちの場合は、すべての銀行で手続きが必要です。

以前、弊所で担当していた元プロ野球選手がご逝去されニュースに取り上げられましたが、銀行口座はそのままでした。個人的な感想ですが、最近の銀行はそこまで血眼になって口座凍結をしている訳ではないのかな、という印象を受けました。

では、故人の口座を凍結する際、どういった手続きが必要で、何が必要なのでしょうか?本記事では故人の口座について、紐解いていきたいと思います。

目次

1.亡くなった人の銀行口座はどうなってしまうのか?

基本的に通帳は解約となり、相続人の口座に振り込んでもらう手続きをすることになります。
一部投資や出資金など引き継げるものもあります。そんな時は各銀行担当者へお問合せしてみてください。

銀行解約に必要な書類

①相続関係を証明する戸籍謄本一式
亡くなった方の、生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を全てです。
戸籍謄本は、引越して本籍を変更したら・結婚したら...など何通も発行されているので、全部集める必要があります。
昭和初期には分家や隠居などでもその都度発行されました。その戸籍から抜けてしまった方(結婚など)は、ご自分が現在生きている証明としてご家族の戸籍謄本を取得下さい。
最近は「法定相続情報一覧図」(戸籍一式を1枚にまとめた証明書)を作成することをお勧めしています。必要書類を法務局へ提出すると発行してもらうことができます。しかも発行料は無料です。交付枚数に制限は無いので、銀行の数だけ発行できます。

②相続人全員の印鑑証明書
銀行は民間の会社なので銀行によって印鑑証明の有効期限が違います。だいたいは3~6か月です。事前に確認しておきましょう。

③遺産分割協議書
以前は遺産分割協議書を作成しなくとも、銀行預金は法律に沿った相続権の割合にて解約することが可能でした。
しかし平成28年に最高裁判所にて、「預金債券は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解する」と判断しました。(最高裁平成28年12月19日決定)
銀行預金は相続人全員の共有状態にある財産なので、遺産分割協議という話し合いで割合を決めてから解約手続きをして下さい、と変更になったのです。したがって銀行を解約する前に遺産分割協議をする必要がでてきました。
しかし現在は、当面の生活費や葬儀費用の支払いのため、銀行窓口にて相続預金の一部の払い戻しを相続人単独でできる制度が設けられています。(平成30年7月より)
 払い戻しできる金額=相続開始時の預金額×1/3×相続人の法定相続分
ただし同じ銀行の複数支店に口座がある場合、限度額の上限は150万円となります。

ここで実務的なお話
いくつかの銀行では、遺産分割協議がまとまる前に、相続人全員の申込にて相続人の代表者へ振り込むかたちで解約することが可能です。
詳細は銀行へご確認ください。代表の相続人が解約金を受け取って、その後に遺産分割協議をすることになります。

④銀行解約の申込書
銀行は民間会社なので、申込書はそれぞれ書式が違います。いくつもの口座をお持ちの方はその都度、記載する内容を銀行ごとに確認する必要があるので銀行の数はなるべく少なくしておくことが残された方のためになるかと思います。申込書の入手方法はインターネットであったり、郵送であったりするので事前に確認が必要となります。

注 意
銀行へ連絡すると同時に、銀行口座は凍結するのでお気をつけください。
①~③の準備が整い、各種引き落とし口座の変更をしてからで大丈夫なので、連絡を急ぐ必要はありません。
ただし相続が揉めていて、誰かが勝手に引き下ろしてしまう可能性がある場合には、口座を一度凍結してしまい話し合いが終わるまで動かせなくするのもテクニックのひとつです。

上記①~④の必要書類が揃ったら、銀行へ解約を申し込みましょう。
ほとんどの銀行が、通帳の支店に申し込む必要はありません。ご自宅に近い支店を探して申し込みます。

しかし、コロナ禍以降は事前予約や郵送にて申込をする必要があったりで、いきなり銀行に行っても断られてしまうことが多々あるのでご注意ください。
身分証明書や実印が必要になることが多いので持物は必ず確認しましょう。

申込み後は銀行窓口の担当者ではなく、各銀行の相続センターに書式一式が送られ、順番に処理がなされます。だいたい2~3週間で指定した口座に入金され、口座は解約されます。

2.よくある質問

通帳が見当たらなくても大丈夫?

データが銀行にあるので銀行名さえ分かれば手続き可能です。
最近ではWeb通帳が主流のため銀行名はどこか控えておきましょう。

通帳印が見当たらなくても大丈夫?

亡くなってしまうと銀行印も実印も無効です。相続される方の実印で手続きするので大丈夫です。

まとめ

  • 銀行解約にはたくさんの必要書類があるので、まずは準備しましょう。
  • どうしても先に現金が必要なときは、遺産分割協議の前に一定額の払い戻しが可能です。
  • 口座凍結のタイミングは解約申込と同時がお勧めです。
  • 銀行で手続きをする際は事前予約が必要なところが多いので確認しましょう。
この記事を執筆した士業さん
深野 友和 Tomokazu Fukano

ソワレ行政書士法人・司法書士法人

ソワレ行政書士法人・ソワレ司法書士法人の代表、深野と申します。
ソワレとはフランス語で、舞踏会やミュージカルで1日数公演ある時に最後の公演(夜公演)を意味し、私達はお客様の人生の夜公演(終活、遺言、相続)のお手伝いをしたい、という想いから事務所名にソワレと名付けることとしました。

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