理解しているようで意外と難しい自動車保険の種類。
今回のテーマは「人身傷害保険」です。聞きなれない方もいらっしゃるかもしてませんね。
人身傷害保険は交通事故実務において重要になることが多い保険ですので、今回はこの保険のポイントについてご紹介いたします。
1.人身傷害保険とは
自動車保険と言えば、対物賠償責任保険、対人賠償責任保険をイメージされる方が多いのではないでしょうか。いずれも事故の相手方に生じた損害を補填するための保険で、任意保険に加入していて、これらの保険に加入していないという方はいないでしょう。
一方で、車両保険と人身傷害保険という保険商品があります。これらの保険は、例えば自損事故(相手方がいない事故)の損害を補填したり、相手方がいる事故で自分にも過失がある場合に、自分の過失分の損害を補填したりするための保険です。
修理費などの物にかかる損害を填補するのが車両保険、治療費や休業損害といった人にかかる損害を填補するのが人身傷害保険です。


2.人身傷害保険のメリット
人身傷害保険のメリットは大きく2つあります。
メリット❶ 相手方保険会社が治療費を支払ってくれないときに役立つ
治療費を払ってくれないというのは、「一括対応」がされないときの場合です。一括対応が難しい場合においても人身傷害保険は力を発揮してくれます。
被害者には嬉しいこの一括対応ですが、被害者側の過失が3割を超えるような場合、相手方の保険会社がこの一括対応をしてくれなくなることが多々あります。
この場合、被害者としては事故で怪我をしたのに、治療費を自分で手出しせざるを得ません。
例えばMRIの撮影を行う場合などになった場合、数万円の費用がかかることもあり、被害者にとっては酷な状況となることもしばしばです。
被害者が人身傷害保険に入っていれば、治療費を自分の保険会社が代わりに支払ってくれますので、被害者が医療機関の窓口で治療費を支払う必要がなくなります。
費用の心配をせずに、治療に専念することができるのです。
メリット➋ 自分に過失がある事故であっても損害額を全額回収することができる
通常、交通事故とは自分と相手方で「過失割合」によって損害賠償額を確定します。
もし人身傷害保険に未加入の場合の事故で過失割合が7(相手側):3(自分側)のとき、7割は相手の保険会社に請求できても、3割は自己負担となります。その自己負担をカバーすることが重大の目的となっています。
以下の事案を踏まえて考えてみましょう。
- 損害額100万円(裁判基準、人身損害のみ)
- 過失割合 加害者70:被害者30
このとき、被害者は相手方に対して、100万円×70%=70万円の賠償を請求することができ、多くのケースでは相手方の保険会社から支払を受けることになります。
それでは、被害者の過失部分(100万円×30%=30万円)についてはどうなるのでしょうか。
まず、被害者が人身傷害保険に加入していない場合は、当然、自身の過失分については自己負担となります。
一方で、人身傷害保険に加入している場合、自身の過失分の30万円を自身の任意保険会社に支払ってもらうことが可能です。
ただし、このような処理をするためには、訴訟提起を行った上で、判決又は訴訟上の和解にて損害額を確定させる必要があるのが一般的です。

3.加入している保険を見直そう

いかがだったでしょうか。あまり馴染みのない人身傷害保険ですが、自分に過失がある場合や相手方のいない自損事故においては大変役立つ保険です。
ご自身の保険内容を確認し、人身傷害保険が付帯されていない場合は今一度見直しをしてみましょう。
いつ誰が事故に遭うかわかりません。「自分は大丈夫」と過信せず、日頃の安全運転と万が一のための備えを考えていただければ嬉しいです。